みなさんは最近十分な睡眠をとれていますか?ご存じのように、睡眠には免疫力の向上・疲労回復・記憶の整理などの効果があります。逆に、睡眠が不十分だと日中の活動に集中できないなどの問題が発生してしまいます。気持ちよく寝つき、十分な睡眠をとるためにはどのような工夫ができるのか、厚生労働省が一般の方を対象に健康情報の提供を行う「e-ヘルスネット」をもとに紹介します。
□快眠はまずは規則正しい生活から
体内時計によって、睡眠のタイミングを決めるだけでなく、前もってホルモンの分泌や生理的な活動を調整し、睡眠への準備が行われます。これらの準備は自分の意志ではコントロールできないため、まずは規則正しい生活で体内時計を整えましょう。
□運動と快眠 習慣が大事
国内外の疫学研究において、運動習慣がある人には不眠が少ないことが分かっています。効果としては、寝付きがよくなることと、深い睡眠が得られるようになります。激しい運動は逆に睡眠を妨げてしまうため、負担が少なく長続きするような有酸素運動(早足の散歩や軽いランニングなど)が良いでしょう。運動を行うタイミングとしては、夕方から夜(就寝の3時間くらい前)が効果的だと言われています。就寝の数時間前に運動によって脳の温度を一時的に上げることで、床に入るときの脳温の低下量がより大きくなります。睡眠は脳の温度が低下するときに出現しやすくなるので、結果として快眠が得られやすくなるようです。
□入浴と快眠 入浴の時間がポイント
入浴には加温効果があり、運動の場合と同じで就寝前に体温を一時的に上げることがポイントです。タイミングも重要で、午前あるいは午後の早い時間の入浴は効果がなく、夕方あるいは夜の入浴が効果的です。深い睡眠をとるには就寝直前の入浴が良いとされていますが、寝付きを優先させるのであれば就寝の2~3時間前の入浴が理想です。入浴のタイミングや温度は自分の体調や好みに合ったものを選択すると良いでしょう。
□光浴と快眠 光で体内時計を整える
光の効果は体内時計を24時間に調整することにあります。ヒトの体内時計の周期は24時間より長めにできているため、長めの体内時計を毎日朝の光によって早めてあげないと、ずるずると生活が後ろにずれてしまいます。起床直後の光が最も効果的なので、起きたらまずカーテンを開けて自然の光を部屋の中に取り込むことが必要でしょう。反対に、夜の光は体内時計を遅らせる力があります。よく用いられる白っぽい昼白色の蛍光灯は体内時計を遅らせる作用があるため、夜は赤っぽい暖色系の蛍光灯が理想と言えます。
□その他の習慣と睡眠(食事・昼寝)
食事について、朝食は簡単なものでもよいので、脳のエネルギー源として糖分を補給することが望ましいでしょう。エネルギー不足で日中の活動が低下すれば、夜の睡眠に影響しかねません。また、就寝に近い時間の夕食や夜食は消化活動が睡眠を妨げてしまうのでできるだけ控えましょう。体内時計を整えるためにも規則正しい食事が望まれます。そして、コーヒー・緑茶・チョコレートなどカフェインが含まれる飲食物には覚醒作用があるため、敏感な人は就寝の5~6時間前から控えた方が良いでしょう。睡眠薬代わりに飲用されることが多いアルコールも決して勧められません。アルコールは寝付きをよくしますが、明け方の睡眠を妨げるからです。
昼寝については、午後の眠気を解消し活力を与える効果があります。15分程度の長さで十分です。高齢者では30分程度の昼寝を活用することで夕方のうたた寝が減少し、夜によく眠れるようになることもあります。
今回、e-ヘルスネットをもとに睡眠のための工夫を紹介しました。e-ヘルスネットでは睡眠に限らず、生活習慣病予防・栄養や食生活・休養やこころの健康・歯や口腔の健康・飲酒・喫煙・聴覚器など幅広いテーマについて各分野の専門家がわかりやすく解説しています。関連する日本の健康施策や専門用語の解説もありますので、健康情報の収集にぜひご活用ください。
また、厚生労働省健康局が発表した「健康づくりのための睡眠指針2014」の第12条に「眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。」とあります。よく眠れない・日中眠たくて仕方ないなどの自覚症状は身体やこころの病のサインだとされています。睡眠の問題により好ましくない影響があり、ご自身の工夫だけで改善しないと感じた時は、早めに医師、歯科医師、保健師、薬剤師など身近な専門家に相談してみましょう。
参考資料
「快眠と生活習慣 樋口重和」 厚生労働省e-ヘルスネット 令和4年9月21日
「健康づくりのための睡眠指針2014」 厚生労働省健康局 平成26年3月31日