日常で耳にすることが多い音楽ですが、いろいろなジャンルがあります。皆さんにも好きな曲やお気に入りのアーティストがいるのではないでしょうか。
私たちは意識して音楽を聴く場面だけではなく、買い物中に流行の曲が流れていたり、作業中のBGMとして環境音を聞いたり、日常のあらゆる場面で何かの音に触れています。最近では「癒し」のためのツールとしてヒーリングミュージックも広く知られるようになりました。このように音楽は私たちの生活の中に溶け込んでいて、心身とも深く結びついている存在だと言えます。
実際に音楽を聴くことは、ストレスを軽減し、心身をリラックスさせる効果があることがこれまでの研究から示されています(山本・清水,2007)。このような音楽の持っている効果を活かし、心身の健康を支援する方法として「音楽療法」があります。音楽療法とは、「音楽の持つ生理的、心理学的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて音楽を意図的、計画的に使用すること」と定義されています(日本音楽療法学会HP)。
このように専門的な場面にも用いられる音楽ですが、なぜストレスと深く結びついているのでしょうか。これまでの研究では、音楽が心だけではなく身体にも影響があることが示されています。例えば、不安や緊張を感じているときに、自分が「聴きたい」と感じる音楽を聴くことで、身体の緊張が緩和されることがあります。具体的には、体表面の毛細血管が拡張し、それに伴って皮膚温が上昇するといった生理的変化がみられることが報告されています。この身体反応が緊張した状態からリラックスした状態になっているとされ、音楽が自律神経系に働きかけることで心身を落ち着かせる可能性を示しています(Davis,W.B.ら,1989)。
一方で、音楽であれば何でもよいというわけではなく、辛い状況に置かれているとき、本人が嫌いだと感じる音楽を聴くと、その状況がより苦痛に感じること、反対に同じく辛い状況で好きだと感じる音楽を聴くと、より長く耐えられるようになることも分かっています(Hekmet,H.M.ら,1993)。このことから音楽がもたらす効果は、音楽のリズムやメロディー、テンポなどの特性だけではなく、「その人にとって好ましいかどうか」という主観的な要因に左右されることもいろいろな研究の中で示唆されています。実際に好きだと感じる音楽を聴くことでストレス反応が低下することも報告されています(西川,2016)。
このような知見を踏まえると、音楽は日常生活の中でも心のセルフケアとして活用できるといえるでしょう。気持ちを切り替えたいときや、気が進まない作業や勉強に取り組むときに、自分の好きな音楽を取り入れることで日常が少し過ごしやすく感じることもあるでしょう。
しかし常に音楽を聴き続ければよいというわけではなく、作業中に音楽を聴く、いわゆる「ながら○○」については注意も必要です。音楽を聴きながら作業をすると、集中できているように感じることもありますが、学習や複雑な作業を行うときには脳の処理する情報が増え、かえって負荷が高まることも指摘されています(大山,2025)。そのため、音楽が助けになる場面とそうでない場面があることを理解しておくことも大切です。
音楽は私たちの心を支える力もありますが、その効果は人や状況によって変わってきます。日常の中で自分に合った形で音楽を取り入れることで心の健康に繋がっていくこともあります。ぜひ意識して音楽を取り入れることを試してみてください。
引用・参考文献
青戸泰子・田邊資章・加藤雄介(2019).音楽聴取が及ぼすストレス反応への影響性-大学生の自己肯定感との関連-関東学院大学人間環境研究所所報,17,35-42.
Davis, W. B. & Thaut, M. H.(1989).The influence of preferred relaxing music on measures of state anxiety, relaxation, and physiological responsesJournal of Music Therapy, 34(4), 168-187.
Hekmat, H. M. & Hertel, J. B.(1993).Pain attenuating effects of preferred versus non-preferred music interventionsPsychology of Music,21,163-173.
西川昭子(2016).音楽聴取が心理的および生理的ストレスに及ぼす影響:音楽嗜好の違いによる検討大阪大学教育学年報, 21, 55-65.
日本音楽療法学会HP(2025).
大山摩希子(2025).背景音楽が作業効率に及ぼす影響―認知的負荷課題を用いた検討―関西福祉大学研究紀要, 28, 77-85.
山本正平・清水遵(2007).ストレス反応タイプの違いが内分泌反応に及ぼす影響と音楽のストレス軽減効果愛知淑徳大学論集コミュニケーション学部・コミュニケーション研究科篇, 7, 141-152.

![心理カウンセリングルームジャニス[熊本]](/shared/ttl_main.png)


