みなさんは、「コーピング」という言葉を知っていますか?「コーピング」とはアメリカの心理学者、リチャード・S・ラザルスが考案し、1980年代から世界中に広まっていった、「ストレスへの意図的な対処法」を指す心理学用語です。コーピングを使うことで、ストレスから自分を助けることに役立ちます。例えば、釣りに行ったり、誰かと電話をしたり、妄想にふけったり、などがあります。
また、コーピングは「質より量!」とも言われています。たくさんあれば選べますよね。ストレス環境によって、引き起こされるストレスの反応も様々なわけですから、ストレスに応じた様々なコーピングを試してみることも大切です。例えば、100個のコーピングを持っていれば、1個だめでも残り99個ありますよね。「あれがだめなら、こっち」ができるわけです。
さあ、自分自身のコーピングを探してみたくなってきたのではないでしょうか?
そこで今回は、「コーピング選びのコツ」を2つと、具体的なコーピングの例をご紹介していきたいと思います。
ではまず、コーピング選びのコツについて説明します。
①コーピングの効果
コーピングでは、短期的な効果と長期的な効果を考える必要があります。例えば、「ヤケ酒」は嫌なことを忘れるための手段としてはメジャーですね。しかし、効果はすぐに終わってしまいます。より強い効果を求めようとすると、酒量やアルコール度数が増えていくかもしれません。つまり、継続的に効果を求めるためにどんどんエスカレートしてしまうのです。
②コーピングのコスト
コストとは、お金、時間、健康、対人関係など、さまざまなものを含みます。例えば、「温泉が好き」な方で、温泉に頻繁に行くのはお金も時間もかかるし…という方もいらっしゃるかもしれません。では、「温泉旅行のパンフレットを眺める」「温泉旅行の計画を立てる」「過去に行った温泉旅行の写真を見る」などといった方法もあります。
コーピング選びのコツがわかったところで、ここからはコーピングの種類とその具体例をご紹介していきます。まず、コーピングには「問題焦点型」と「感情焦点型」があります。
・問題焦点型:ストレス反応を引き起こす「ストレッサー」事態に働きかけるもの。
例)新しく配属された部署が苦痛→部署を変えてもらえるよう直訴する、仕事量を減らしてもらえるよう訴える、など
・感情焦点型:悲しみ、苦しみ、怒り、不満などのストレス感情に目を向け、それを緩和するもの。
例)新しく配属された部署が苦痛→カラオケでストレス発散、エステでリフレッシュ、同僚に愚痴を聞いてもらうなど
これらの2つはどちらかに偏りすぎると新たなストレスが生まれたり、環境の改善が望めなかったりすることもあるので、「バランスよく」が大切です。
さらにほかにもコーピングを分類する考え方があります。それが「認知的コーピング」と「行動的コーピング」です。
・認知的コーピング:頭の中で考えたりイメージしたりするコーピング。
例)思い出に浸る、自分をねぎらう、身体感覚に注意を向ける、人とのつながりを確認する、考え方を変えてみる、など
・行動的コーピング:具体的な行動を伴うコーピング
例)誰かと交流する、どこかへ行く、無意味なことをやってみる、だらだらしてみる、癒しを得る、など
コーピング選びに今回の情報が参考になれば幸いです。皆さんに合った、たくさんのコーピングが見つかりますように。
引用・参考文献
伊藤絵美(2021)コーピングのやさしい教科書 金剛出版