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PMSとPMDDとの付き合い方

 みなさんは「PMS」と言う言葉をご存じでしょうか。PMSは「月経前症候群(premenstrual syndrome/PMS)」といい,「月経前3~10日間の間続く精神的あるいは身体的症状で,月経発来とともに減退ないし消失する」症状です。PMSは身体面,精神面ともに様々な症状が出てきます。例えば,身体面では,頭痛・片頭痛,手足のむくみ,肌荒れ,便秘・下痢,腰痛等,精神面では,抑うつ状態(気分の落ち込み),イライラ,感情の起伏が激しくなる,不安高まる,涙もろくなる等があげられます。中でも「月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder/PMDD)」と言われるPMDDはこれらの精神症状が特に強く表出すると言われています。    では実際これらの症状はどれほどの女性に現れているのでしょうか。2003年に20~45歳の女性を対象として行われた調査では,『無しまたは軽いPMS症状がある』と答えた人が76.6%,『中度のPMS症状がある』と答えた人が17.5%,『PMDDかもしれない』と答えた人は5.9%と,少なくとも約20%の女性が『PMS症状がある』と回答しています。また,18~22歳対象で『中度から重度のPMS症状がある』と答えた人は20.4%と,やはり約20%の女性は「PMS症状がある」と訴えている結果となりました。  PMS,PMDDは成人女性だけの問題ではありません。2006年に高校生を対象とした調査があり,そこでは何らかの症状がある人が64.4%,『中度から重度のPMS症状と思われるものがある』と答えた人が11.8%,『PMDD症状と思われるものがある』と答えた人は2.6%と過半数がPMS及びPMDD症状を訴えているという結果が示されました。PMSやPMDDによって学校や職場での生活に支障をきたしているデータも見受けられます。  それではこのPMS・PMDDとどう付き合っていけばよいのでしょうか。具体的な治療法として,経口避妊薬(ピル)で原因となるホルモンの働きを抑制したり,抗うつ薬でうつ状態,イライラ,不安感を軽減させるなどの薬物療法が主としてあげられますが,心理療法の一つである認知行動療法も有効とされています。  自分がどういう症状や感情に困っているのかを客観的に見つめるところから始め,それに対して自分の認知がどのように感情や行動に影響しているのかを理解した上で,どのように捉えられるようになればストレスを感じにくくなるのか,バランスの良い対応策はあるのかなどの治療計画を立て,実践していきます。これを繰り返していくことで,不快な症状を軽減することが出来ます。実践する際は以下のことを意識して行いましょう。 ①自分のストレスに気づく ②自分の考え方が感情や行動にどのように影響しているかを見つめる ③生活を振り返りながら心が軽くなる活動を増やす ④現実的でバランスのいい対応策を考える ⑤心,体調の変化を記録し,客観的に見つめる 以上のように,自分の症状を見つめる(モニタリング)ことが大切になってきます。また,パターンがつかめてきたら事前に対処が打てるようにもなります。    いかがでしたでしょうか。今回はPMS・PMDDについての概要とそれらに対処するためのテクニックとして認知行動療法を紹介しました。最初の内は上手くできないかもしれませんが,専門家や技術・知識がある人の下で行ったり,同じ症状を持つ人同士でやってみるのもより効果的です。また,PMS・PMDDは抑うつ障害などの心身症とも関連してきます。不安や疑問がある際には精神科病院やクリニックへの受診も視野に入れ,自分に合った治療方法を見つけることが一番です。 〈引用・参考文献〉 江川美保(2023)https://www.konicaminolta.jp/michicake/about/about02.html(最終閲覧日2024年7月6日) 大阪メンタルクリニック(2023)PMS・PMDD (月経前症候群)| 大阪メンタルクリニック (osakamental.com)(最終閲覧日2024年7月6日) 大澤亮太(2023)【精神科医が解説】【医師が解説】月経前症候群(PMS)の症状・診断・治療 |田町三田こころみクリニック (cocoromi-mental.jp)(最終閲覧日2024年7月6日) 山口悠・野村純(2022)高校生におけるPMS・PMDDの実態および学校生活へ与える影響―保健室来室回数・保健調査有症項目数,欠席日数,遅刻・早退日数との関連―,千葉大学教育学部研究紀要,70,99-109.